各市区町村で始まる全国予選に向けた試金石。第11回フィールドフォーストーナメントは、千葉・豊上ジュニアーズの3年ぶり2回目の優勝で閉幕した。埼玉・半田公園野球場での決勝は、昨秋の関東大会1回戦と同一カードに。前回は惜敗していた豊上が雪辱し、茨城・茎崎ファイターズの大会3連覇も阻んだ。スコアは8対3と開いたものの、夏の全国大会の常連同士とあって、勝敗を超えた見どころもドラマも複数。大会MVPには、決勝で2本塁打の豊上・神林駿采主将が選ばれている。
※学年未表記は新6年生
(取材&文=大久保克哉)
優勝/豊上ジュニアーズ
[千葉・柏市]
準優勝/茎崎ファイターズ
[茨城・つくば市]
■決勝
◇2月16日
豊上ジュニアーズ(千葉)
240101=8
003000=3
茎崎ファイターズ(茨城)
【豊】中尾、加藤、中尾、神林、濱谷-神林、福井
【茎】山﨑、百村-佐々木
本塁打/神林2(豊)
二塁打/山﨑、関(茎)
3月から各地で始まる全国予選を前にした『ガチンコ勝負』という位置付けで、2015年に第1回大会を開催したフィールドフォースカップ。第11回大会のファイナリストは、ともに昨秋の県王者で、関東新人戦の1回戦で相対していた(リポート➡こちら)。
その新人戦では茎崎ファイターズが5対3で勝利。そして今回は豊上ジュニアーズが序盤で大量リードし、そのまま逃げ切りで雪辱を果たした。手に汗握るような好ゲームというわけではなかったものの、スコアほど実力は離れていなかった。冬場の成長やシーズンを占う意味では、見どころが複数。また、ポジション争いを巡るドラマも双方にあった。
2つのカルテット
豊上は同日の準決勝でコールド勝ちし、髙野範哉監督は「新5年生の4人(全員出場)が楽しみ」と話していた。新6年生には、昨夏の全国大会を経験した福井陽大、神林駿采、中尾栄道がいる。関東新人戦の最速103㎞左腕・山﨑柚樹を加えた“カルテット”は、全国随一と言えるほどハイレベルだ。ただし、万事をこの4人に頼り切るだけではないあたりが、チームの全国区たるゆえんだろう。
関東新人戦でメンバー入りしていた“新5年生カルテット”の関澤月陸、後山晴、玉井蒼祐、加藤豪篤が、この決勝でも全員プレーした。準決勝に続いてロングリリーフした軟投派の加藤(=上写真)は「絶対に試合をつくってくれる」と指揮官の信頼も厚い。さらに強固な地位を築きつつある伸び盛りが、二番・遊撃の後山だ。
1回表に一死から中前打を放ち(=上写真)、続く神林、中尾までの3連打につなげた。そして満塁から、五番・矢島春輝が三塁線に転がしたスクイズバントで、後山に続いて二走の神林も生還。こうして打線を波に乗せたのは、二番を打つ新5年生だった。そして技ありのバントを決めた矢島(新6年)が、今度はスイングで打点を上乗せすることに。
1回表、豊上は二番から四番・中尾(上)までの3連打と、矢島の2ランスクイズで先制(下)
2対0とした豊上は、続く2回も攻撃の手を緩めなかった。先頭の八番・村田遊我が中前打を放ち、内野ゴロ2つで三進。さらに二番・後山の死球と二盗で二死二、三塁とすると、敵失で2点を加える。なお二死一、二塁から、矢島が左打席から右前タイムリー。一塁へ頭から飛び込んでイニング3点目をもぎ取ると、一、三塁からの重盗で三走の中尾が生還し、6対0とリードを大きく広げた。
2回表、豊上は村田の中前打(上)に始まり、右前に打ち返した矢島が一塁へ気迫のヘッド(下)で二走をかえすなど4点
勝敗を超えた収穫
さて、のっけから守勢に立たされた茎崎だ。「負けていいわけではないですけど、練習試合じゃなくてこういう大会の決勝という舞台で、こういう強いチームとやったときには勝っても負けても得るものがたぶん、あると思います」とは、吉田祐司監督の試合後の弁。
春本番への試金石で得た収穫は大、と言えるだろう。
先発した右サイド・山﨑修眞(=上写真)は序盤でつかまったものの、独り相撲ではなかった。バックに手痛いミスがあっても切れずに打たせて取り、3回は3者凡退に。4回はソロアーチを浴びたが3アウトまで奪って、二番手にバトンタッチ。計7失点も自責点は3、信頼を損なうことはないピッチングだった。
2回に一塁悪送球で2点を献上してしまった三塁手・宮下陽暉もまた、ワンミスを引きずるような軟ではなかった。実は外野からホットコーナーにコンバートされたばかり。いわばテストマッチだったこの一戦では、何と計10回も打球を処理した。
茎崎の三塁を守る宮下は適時失策後、再三の守備機会をすべてノーミスで通した
宮下のミスは上記の1つのみで、続く3回一死からは3者連続の三塁ゴロをすべて完璧にさばくなど「合格点だと思います」と吉田監督。マウンドの山﨑が打たせて、三塁の宮下がさばいてリズムに乗る。これも茎崎のパターンのひとつになっていくことだろう。
外野も堅守が光った茎崎。上は終盤に右翼へ回った柿沼、下は中堅手の佐藤大翔
宮下と入れ代わりで、三塁から外野にコンバートされた柿沼京助は、レフトでもライトでも守備範囲の広さをアピール。打線では上位につなぐ九番で、3回裏に先頭で放ったライナーは一塁手に好捕された。
茎崎はそれでも一番・宮下の四球と、続く山﨑の左中間二塁打(=上写真)でまず1点を返す。なおも一死一、二塁から、四番・関凛太郎の左越え二塁打(=下写真)で3対6とした。
茎崎はまた4回には、途中出場していた野苅家快成が中前打(=下写真)から単独スチールにも成功。2回の攻撃では、豊上の強肩捕手・神林に二盗を阻まれていたが、怯まぬあたりは2019年全国銀メダリストの矜持と努力の成せる業だろう。しかも野苅家は、昨秋の新人戦は正三塁手としてプレーしていた。
「レギュラーを取られちゃって、でも監督から『いつでも出られるように準備しておけよ!』と。その出られたときに活躍して少しでもアピールできたらいいなと思って今日も準備してました。また頑張れそうです」(野苅家)
茎崎で4年生から正遊撃手の石塚匠主将(下)は、相変わらずの安定した守備と声でナインを鼓舞していた
決め手は新6年生たち
勝敗のポイントとなったのは、豊上の“新6年生カルテット”。厳密には、未登板の山﨑を除く3人だった。
準決勝に続いて先発した左サイド・中尾(=下写真)は球威で押し込んで初回を0点で立ち上がる。2回にはバックのミスの直後に与四球で降板も、4回から再登板して2イニングをヒット1本の無失点に抑える力投を見せた。
そして2回のピンチを盗塁阻止で終わらせた神林が、バットでも相手の気勢を削いでみせた。まずは3点を返された直後の4回に、二死無走者から左へソロアーチ(=下写真)。6回も同様にもう1本放ち、完全にダメを押した。
その神林が連続与四球でリリーフに失敗した6回裏。濱谷悠生の好救援を促し、フェンス際への捕邪飛に頭から飛び込んでの大ファインプレーで、ウイニングボールをつかんだのが福井だった(=下写真)。
「新6年生のピッチャー陣はカウント2-2でも怖い。安心して見られるピッチャーができあがるかどうか…」
V監督はどこまでも手厳しかったが、中尾も神林も球威満点で、実戦でもいける算段は立ったはず。三塁手の福井がマスクをかぶり、外野手の濱谷(=下写真)がマウンドで経験値を増したこともプラスでしかないだろう。
これで両チームの対戦成績は、1勝1敗の五分。練習試合は低学年時から数えきれないほどしているそうだが、関東新人戦、フィールドフォースカップに続く、ガチンコ対決“第三幕”は――8月の新潟、「小学生の甲子園」で実現し、ついに雌雄を決することになるのかもしれない。
〇豊上ジュニアーズ・髙野範哉監督「いつもの茎崎の粘りなら、もっと四死球を出していたはず。やっぱりウチの不安は投手陣。例年は打たれたら仕方ないという感じなんですけど、今年はそれ以前に、いつ四球を出すのかという段階なので、新5年生(加藤)を使うしかない。誰か出てきてほしいですね」
●茎崎ファイターズ・吉田祐司監督「追う展開も、序盤でビハインドの経験もマイナスではない。何が原因で負けたのか、子どもたち自身が一番分かっていると思います。(途中出場で活躍した)野苅家みたいな10人目、11人目が出てくるとチーム力ももっと上がってくると思います」
―Most Valuable Player―
大車輪の活躍で文句なしの受賞も、ほどほどの笑顔
かんばやし・しゅんと
神林駿采
[豊上新6年/捕手・投手]
大会最終日の準決勝と決勝で、計7打数5安打2本塁打6打点と大暴れ。準決勝の初回の先制タイムリーは、左中間への二塁打だった。決勝も初回に中前打(=下写真)。そして第3・4打席での2発は、いずれもレフト方向のサク越えアーチで、より効いたのが3点を返された直後に放った4回の1本だった。
「前の回の守備で自分のサインミスで失点しちゃって、監督からも『取り返してこい!』と言われて、あそこはもうホームランしか狙っていませんでした」
右打席での力強いバッティングもさることながら、その“鉄砲肩”も準決勝から目を引いた。二塁送球は、ボールに指がうまく掛かれば、ほぼ一直線にベース上へ達する。決勝では一、三塁のピンチで二盗を阻んでみせた。
またその投力を活かし、準決勝は最終回を締めた。決勝も大量リードの最終回にマウンドへ上がったが、連続四球で救援を仰ぐことに。文句なしに大会MVPに輝き、「うれしいです」とは言うものの、満面の笑顔が見られなかったのは、そのあたりの課題も理由なのかもしれない。
昨夏の全国舞台では「五番・中堅」で活躍し、秋の新人戦は関東大会で一発も放った。三番・捕手の主将は、謙虚にまだまだ上を目指している。
(井口大也)
※神林選手の本塁打の動画は「2025注目戦士」で紹介予定ですが、公開時期は未定です
―Good Loser―
四番の一振りも「チームのために」
せき・りんたろう
関凛太郎
[茎崎新6年/一塁手]
右打席での落ち着いた佇まいといい、恵まれた体格を存分に生かした強力なスイングといい、名門の四番を張るにふさわしい新6年生だ。
昨秋の関東新人戦では、大会最速103㎞をマークした豊上の左腕・山﨑柚樹から、決勝のサク越え3ランを放っている。そしてこのリマッチでは、3回に左越えの2点二塁打。序盤で6点を失い、ワンサイドとなりかけた流れを一振りで止めてみせた。
しかし、その後は打線全体が抑えられての敗北。関凛太郎の口からまず語られたのは、自身の一打のことではなく、チームを想えばこその全体の課題だった。
「練習の雰囲気だったり、試合の入り方だったり、そういうところも突き詰めていかないと。試合でもピッチャーが投げやすい環境というか、バッターと1対1で戦うのではなくて、守る自分たちもベンチも含めて10対1でバッターと戦えるくらいに、全員で野球をしていきたいです」
熱くて頼もしい、中軸選手だ。